
峰竜太選手インタビュー(2026年6月号)
リセットされた「気持ち」

――自分の走りがどのようにファンに伝わっているか、についてどう思ってます?
峰 自分の魅力は感動させることだと思うんですけど、でもおちゃらけてるじゃないですか、僕。チャラチャラしてる。宮地元輝と真逆じゃないですか。
――アハハハハ。
峰 でも、わざとやってる部分もあるんですよね。後輩もとっつきやすいし、こういう感じで最強だったらなんかいいかなって思うし。チャラチャラしなくてもやれるんですよ。
――わかってますよ。
峰 インタビューなんかでも、強気で、謙虚さゼロでやってました。これも完全にセルフブランディング。いいことなんかひとつもないですよ。先輩に嫌われるし、アンチも出てくるし。それは本田圭佑さんが「ワールドカップで優勝します」とか「ミランの10番を取ります」っていうコメントを聞いたときに、それこそが人の心を動かすと思ったんです。見てるところの次元が違うというかね。謙虚なことは、もちろんいいことではあるんですよ。
――でも峰竜太はあえて謙虚さを見せない。
峰 それはキツいんですよ。わかってくれよと思うけど、キツい。それを服部幸男さんに相談したことがあったんですよ。そしたら「それは竜太しかできないんだから、続けな」って。だから、なんか言われたら服部さんのせいにしようと思ってます(笑)。
――まあ、それはボートファン向けですよね。僕は最近、そこまでボートに詳しくない人に触れることが増えていて、そういう人でも峰竜太がナンバーワンだというわけですよ。
峰 へええ、それは自分じゃわからないですよね、僕より上手い人もたくさんいるし……知名度なのかな。ボートファンになったときに最初に知る名前だったりするし。
――いや、レースから伝わってるんですよ。だって、そういう人は峰竜太の言動まで見ていない。
峰 僕より上手い人がいるのに?
――上手い下手じゃないんでしょう。何かが伝わってるんだよね。
峰 わかんないなあ、自分では。
――結局、積み重ねてきたものがレースに出てるんじゃないかと。で、昨年一昨年のSG勝ててないとき、安田大サーカスのクロちゃんが「峰さんでさえも勝てなかったりするんですね」なんて言ったりする。それってね、迷いがレースに出てたのかな、それが伝わったりするのかな、とも思ったんですよ。
峰 ああ、僕、弱気だったです。昔はどれだけ人を抜いていくか、だったのに、最近は抜かれないような意識が強くなってるかもしれないですね。それはダメだって後輩に言ってるのに、やっぱり心が弱ってると自分もそういうのが出ちゃいますね。極端な話すると、昔は1艇身後ろの人は気にせず、10艇身前の人を追いかけてた。本当は1艇身後ろってめちゃくちゃ気をつけなきゃいけないじゃないですか。なのに、とても追いつかない10艇身前の人を追いかける。その頃は気持ちが強かったんでしょうね。
――そこに戻ったからクラシック優勝につながった?
峰 強くなったわけじゃないですよ。弱さがまろやかになった。別に失うものはあるし、みんなを蹴落としてまで一番になろうとまで思わないし、ならば自分の努力は続けて、終わりは見ずに、結果を出せたらいいなって感じかな。
――「充分です」と弱さを受け入れられるのはそういうことかな。
峰 それは明らかにそうです。
――結局、峰竜太の強さの秘密は「気持ち」ですね。
峰 僕だけじゃないと思います。そこにフォーカスしていない人が多いだけでね。でも、それは目に見えないものなので、ターンとかプロペラに行ったりする。
――クラシックでは、3戦目に4カドまくりを決めたあと、「努力が実った」というコメントがありました。めちゃくちゃ整備を繰り返していて、それが実ったということだと思うんだけど、実際は「努力する気持ち」ということかもしれないですね。
峰 蒲郡は部品がいっぱいあったんです。だったら諦めがつくまでやろうって決めた。セット交換を6回やったんですよ。3個のセットを2往復(最終的に元に戻してレースに出ている)。普通はそこまでやらないですよ。でもやれたのは蒲郡への恩もあったかな。それに、やれるのにやらないのはサボリになっちゃうんですよ。やらない人がサボってるということじゃないですよ。自分に対して、やれるのにやれないのはサボリに見てしまう。だからサボっちゃダメだって自分に言い聞かせながらやってたんです。
――それも気持ちですよね。
峰 あとデカかったのが、若松で事故ったじゃないですか。
――周年のドリーム戦(3周1マークで小回りしようとした際、池田浩二に接触。自身は落水失格)。
峰 あのとき気持ちが弱っちゃって、(宮地)元輝が察してきて、「竜太さん、辞めようとか思ってないですよね?」とか言ってきて。「もう無理かもしれん」って言っちゃったんですよ。あのときは周りが見えてなかったし、よく考えたらあそこに浩二さんが来ることはわかるのに、視野が狭くなってしまって……もう無理かも、って。元輝は「竜太さん、そんなこと言わないでくださいよ」って言ってくれたんですけどね。それで途中帰郷したわけですけど、帰るときに馬場(貴也)さんが「お祓いに行ってこい」って言ってくれたんですよ。それも怒ったような感じで。お前はいろいろやりすぎだから、YouTubeとかそんなの忘れて地に足つけろ、って。僕、そんなのまったく信じないんですよ。お祓いなって行ったことないし、初詣も行ったことない。昔、親に連れていかれたときに大げんかしたくらいなんですよ。でも、馬場さんがそこまで言ってくれたから、調べて行ったんです。
――初めて行った。
峰 わかったのは、神の力とかよりも、心をリセットするのには何か必要だということなんですよ。何もなければ、明日からリセット、ってなかなかできない。でも、お祓いを受けたときにリセットできたんです。もう明日からは何もないのかも、そう思えたのがデカかったんですよね。プラシーボ効果っていうのかな、神社ってそのためにあるのかもしれないと思いましたね。そのあと、ハワイに行ったんですよ。そこで人の温かさ、自然の大きさを知って、自分がいかにちっぽけかと思った。マジでちっぽけ。あんなに好きなボートレースで何をこんなに悩んでるんだろうなと思って、「ボートに乗りたい!」そう思えたんですよね。
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