
峰竜太選手インタビュー(2026年6月号)
迷いからの脱却

――なぜそういう感覚になったんですか?
峰 40歳で辞めようと思ってたんですよ。
――うん。
峰 松井繁さんの言葉がそこを延ばしてくれたというかね。
――松井さんの言葉というのは、この間の対談ということ?(芦屋公式YouTube「あしやんTV」で実現)
峰 そう。迷ってたんですよ。俺はどうしたらいいんだ、と。40歳になってからずっと迷っていた。
――ふむ。
峰 グランプリをもう一回獲ったら辞めようか、とか、終わりをずっと考えてたんですよ。俺はどこで終わったらいいんだろうと。
――それは40歳になってから?
峰 少し前から。40歳になって、ここが期限なんだけどなあ、どうしよう、って。
――なんで40歳を期限に定めたんですか?
峰 植木通彦さん(現ボートレースアンバサダー)とよく話していたことがあるんですよ。植木さんは40歳で引退しましたけど、衝撃的だったんですよね。それで、植木さんに「なんで40歳で辞めたんですか?」って訊いたら、植木さんは大ケガもあったし、30歳のときに「40歳まではたまたま走れた10年間、だから40歳まで一生懸命やろう」と考えたって。そのとき、終わりを決めていたら、人はどこまででも頑張れるんじゃないかと思ったんです。そして、それをしなければ一番にはなれないと思ったんですよ。ずっと稼がなくていいから、この10年間の間にナンバーワンにならせてください。それで40歳までという縛りを設けたんです。神様との契約じゃないけどね。
――ナンバーワンになりましたよ。
峰 そう、それでナンバーワンになれたと思うんです。グランプリも獲って、オールスターも獲って、年間表彰で5冠獲って(20年。最優秀選手、最多獲得賞金額、最多勝利、最高勝率、記者大賞)、SGドリームすべて1号艇に乗って、これがナンバーワンということなのかなって思ってました。でも、そこで夢は消えてないんですよね。グランプリは2回獲って、もう1回は獲りたいなってのもあったり。そこで懲戒があって、自分の人生を崩すような出来事もあって。
――22年に出場停止処分がありましたね。SGも1年間走れなかった。
峰 このままではバッドエンドじゃないですか。業界に迷惑もかけたし。こんなんで終わるのか、俺の人生は、と思いました。そこから復帰して、(SG復帰戦の)ダービーで優勝できて。あのダービー優勝が「もう一回頑張れよ」という業界の声に聞こえたんです。だって、あんなにうまくいかないよね。
――SG復帰戦で優勝、しかも24場制覇と100Vを同時達成。
峰 あのとき38歳だったのかな。リミットまで残り2年。それまでにもう一回グランプリを獲らなきゃいけない。それで、その年のグランプリは「最後だと思って走ります」ってコメント残して。
――あれはファンをざわつかせましたよ。
峰 正直、獲ったら辞めてました。だから獲れなくてよかった(笑)。
――いま思えば、ね。
峰 あのときは誰にも言わなかったし、嫁さんにも言わなかったけど、でも獲ったら絶対に辞めてました。辞めたいとかじゃない。自分で縛っていたものを、夢はかなったのに反故にするのは違うだろうということですね。ただ、40歳になって、いよいよ辞めますというときに、グランプリのあの転覆、それがずっと残っていたんですよ。
――21年の優勝戦。1号艇で転覆して、後続を巻き込んで3連単不成立になりました。
峰 だからもう1年、もう1回グランプリ、自分をリセットするためにそこだけ挑戦させてもらいたい。
――そのために走ると。
峰 ただ、それがキツかった。葛藤がありました。誰かが「はい終わり」って言ってくれるわけじゃないし、レースに行くとファンが沸いてくれるし、それでタイミングを失ったというかね。ならばグランプリ獲って辞めるっていうのはキリがいいわけですよ。名前を残したかったのもあるんでしょうね。「うわ、峰はこのタイミングで辞めるのか」って、それが欲しかった。でも獲れずに葛藤していて、そこで松井さんの言葉なんです。あれは僕から松井さんにオファーを出しました。そこで松井さんにぶつけてしまおうと。それで松井さんがあの言葉をくれた。
――それで吹っ切れたものがあったわけですね。YouTubeを見ていない方は、ぜひチェックしてもらいたいですね。

峰 あと、横澤(剛治)さんの言葉も大きかった。
――横澤さん!?
峰 すごく人を見る目がある方なんですよ。その横澤さんが「終わりなんか決めなくていいんじゃね?」って。キャンプ場でお酒を呑みながら話してたんですけどね。僕が「自分を見失っている」と言ったら、そう言ってくれたんです。そして「辞めることを考えないほうがかっこいいよ」って。アイドルの解散ライブとか、終わりを決めてやるのもいいと思うんですよ。ファンもそこに向かって終われるしね。でも、横澤さんの言葉がグサッっときて。それでも意思決定できていないなかで、松井さんの言葉なんですよね。
――横澤さんの言葉が刺さり、松井さんの言葉が決定打になった。
峰 俺も40歳で辞めようと思ったけど、もう56歳だって。
――75歳まで、とも言ってましたよ。
峰 それを聞いたときに、一人じゃないんだと思った。松井さんは自分の弱さも語ってくれましたよね。それがカッコよく聞こえたんです。燃え尽きるまでやるんだ。終わりなんか見ずに、いつもやっていることをやるんだよって。それがものすごく刺さった。
――期限のはずの40歳を超えても終われないという葛藤からは脱却したわけですね。
峰 しました。ちょうど松井さんと対談する頃に、SNSのコメント欄に「終わりを決めた人に進化はありません。だから終わりとか言わないでください」って、誰か知らない人が書いてくれたんですよ。これもまたぶっ刺さった。だからもう、絶対に辞めようとかは言わないと決めました。
――終わりを決めたからナンバーワンになれたわけでしょ?
峰 最初に設定した「終わり」は期限だったけど、最後に見ていた「終わり」はどうやって辞めようかという迷い。意味がぜんぜん違う。同じ「終わり」だけどね。だから、40歳とかもういいや、って。終わろうと思えば終わればいいし、その日まで毎日10代の頃のような努力をしようと誓いましたね。
――蒲郡ダービーから2年半くらいSG獲れなかったじゃないですか。それが、そうして呪縛から解き放たれた瞬間にSGを獲るというね。
峰 そうなんですよね。
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