
PGⅠ第1回スピードクイーンメモリアルin浜名湖レポート

未来を拓く転覆
山川美由紀と優勝戦で2着を争ったのが川井萌である。開催地・浜名湖の女子エースといえば、三浦永理と長嶋万記のツートップ。今回ももちろん参戦し、地元勢を牽引してきた。しかし、地元の主役を張ったのは、まず最も登番が若くありながらもドリーム戦に名を連ねた刑部亜里紗。そしてレースが始まってからは、トップルーキーにふさわしいハツラツとした走りを見せた川井だった。
まず、この記念すべき大会のオープニングを飾ったのが川井だ。初日1R、1号艇に組まれた川井はきっちりと逃げ切り。その後も3コースまくり差しで勝利をあげ、堂々の予選2位通過を果たして、GⅠ2節目にして初の予選突破を果たした。準優も1号艇で逃げ切り快勝。地元勢では唯一の優出を果たし、大きな期待を背負って優勝戦のピットに立った。
地元でのGⅠ初優出、しかも内枠となれば、緊張感がなかったとは思わない。しかしながら、いざ水面に飛び出してみれば、その走りは刮目すべきものだった。スリットではやや後手を踏んだ格好となった川井は、意を決してのツケマイ敢行。戦前から狙っていたもののようで、それは1マーク手前の隊形にまったく怯むことのない、躊躇のかけらも見当たらない決然たるツケマイだった。

これは残念ながら逃げた平高奈菜を捕らえることはできなかったが、その後の山川との2番手争いが強烈だった。2マーク、2周1マークともにツケマイ攻め。差すことなどまったく考えていないような、偉人山川に対しての思い切った攻撃。2周バックでは舳先は山川より前にあり、この強気なチャレンジは奏功したかのようにも見えていた。しかし、2周2マークに魔が潜んでいた。ここもやはり山川を外マイで交わそうとしたのだが、サイドが大きく外れて、艇は外へ外へと流れていく。それでも立て直そうとハンドルを入れたのだろうが、そこでバランスを崩して転覆。川井は完走がかなわなかったのである。
いろいろな評価はあるだろうし、①-②を買っていたファン、あるいは①-③-②などを買っていたファンも言いたいことはいろいろあるだろうが、川井がルーキー世代の若手であることを考えれば、この全速攻撃はむしろ称えられるべきだろう。差して、それが漏れたり引き波で後退して敗れるより、握って握っての負け方は必ず先々につながっていく。これは川井にとって濃密な養分となりうるものである。川井自身、レースを壊した、あるいは舟券を買っていたファンの期待に応えられなかったとの悔いはおおいに残っただろうし、反省すべき点もあるだろうが、ならばこれをバネにしてさらに成長することで懺悔とするべきだし、その思いは確実に川井を逞しくするはずだ。そう、これはただの転覆ではない。川井の未来を拓く転覆である。強い思いで前を向いて進んでもらいたい。(黒須田)
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