
SG第52回ボートレースオールスターin丸亀レポート

予選でみせた足色は、明らかに節イチパワーであった。予選トップだから、順当にいけばあとは1号艇2回を逃げれば優勝。その時点で勝負あり、そう思われるのはまあ自然なことではある。しかし、佐藤の勝因はただただ、47号機を手にしたことにあったのだろうか。
おそらくそうではない。冒頭で書き出した通り、モーターパワーはあくまで「勝因のひとつ」だと、僕はそう考えている。
まず、47号機は勝手に噴いたのかといえば、そうではないのだ。もちろん、評判通り、あるいは三島の見立て通り、素性は上位であった。しかし、それを引き出し、さらに底上げしたのは、佐藤の調整によるものだ。丸亀のピットに設けられているプロペラ調整所は、ガラス張りの調整室と、その外におそらくもともと臨時で設けられたはずの一角にあるので、我々からもその様子を観察しやすい。佐藤の姿は当然、節間を通じてそこで見かけたものである。しっかりとプロペラと向き合ったからこそ(もちろんギヤケースなどの調整もしっかり行なっているはずだ)、47号機は超抜となった。
実際、まさに佐藤をマークした今垣が、しみじみと言ったものである。自身は相当に調整に手を焼いたことを嘆きつつ、「それにしても、佐藤くんはよく出しますよね」。今垣は、佐藤くんは「出す」と言ったのだ。佐藤くんのモーターは「出ている」ではない。佐藤が出したと認めているのである。我々の目には「佐藤のモーターは抜群に出ている」と見えるが、超一流レーサーは「佐藤は出す」と判断するのである。評判機を引いたのはたしかに幸運だったが、それを最高のモーターに仕上げたのは間違いなく、佐藤自身だ。

では、しっかりと仕上げて超抜パワーに育ったからといって、確実に勝てるかといえばそういうわけでもない。レースにおける技量というものもあるのがボートレースだ。SGだから技量には不安は少ないと言うべきだが、次にメンタル的な部分も結果を左右する要素となってくる。プレッシャーや緊張感などが技量に影響することはよくあることだ。ましてSG優勝戦1号艇ともなれば、すでにクラシックで経験し乗り切っているとはいえ、平常心を保てないことがあっても何も不思議ではない。
これについては、優出を決めた峰竜太が会見で語ったことが印象的だ。自身も仕上がりは悪くないとしたうえで、しかし佐藤と比べれば劣勢。そのうえで、「佐藤くんを見ていると、こういう場面でもミスをするようには思えない。だから、ミス待ちではダメ。自力で勝てるレースをしないと」。あの峰竜太が、直截な言葉を使ったわけではないが、メンタル面での不安を佐藤には感じないと証言したのである。
佐藤は、素性いい47号機を自力で仕上げ、そのうえでパワーを活かせるレースを揺るぎなく遂行した。勝因をもう一歩踏み込んで考察すれば、そういうことになるだろうか。つまり、このオールスター優勝は佐藤がしっかりと自分の実力で掴み取ったものだ。単にモーターが出ていたから勝ったのではなく、それを佐藤が操ったからこそ優勝につながったということである。

それにしても、優勝戦は豪華なメンバーだった。全員がSGウィナーであり、茅原悠紀、峰竜太、桐生順平はグランプリウィナーでもある。磯部誠も篠崎元志もオールスター常連。これがSG5節目で、オールスター初出場だった佐藤よりも、はっきり言ってビッグネームばかりがずらりと並んでいた。佐藤自身、表彰式で自身のアピールポイントを問われて、優勝戦メンバーやオールスター出場メンバーを見れば自分はまだまだだと答えている。クラシックを制してSGウィナーの仲間入りを果たしたといっても、佐藤が少々気後れしてもおかしくない、そんな優勝戦の顔ぶれであった。
しかし佐藤は、レースではそんな素振りなど微塵も見せることなく、堂々と逃げ切ってみせた。己の力で勝ち取ってみせたことで、今後はこの優勝戦メンバーにも肩を並べる存在であると、周囲からもファンからも見られていくことになるだろう。2度のSG優勝戦1号艇とはまた違った重圧のようなものが、佐藤にのしかかることになるのかもしれない、ということだ。これをやすやすとクリアしていくのだとしたら、佐藤隆太郎はますます大きな存在になっていくだろう。(黒須田)
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